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2012年12月

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凍傷 金田正樹著「感謝されない医者」より

不注意と言えばそれまでだが、30分ほど素手でハーネス、アイゼンなどを装着しただけで、これほど酷い凍傷を負ったことはショックであり、これからの冬季登攀を楽しみにしていただけに落ち込みもした。
幸い良い医師を見つけることができ、順調に回復中である。完治にはもう少し時間がかかるが、トレーニングを再開できるようになった。
この際、凍傷に関して勉強しておこうと、金田正樹著「感謝されない医者」を読んだので、登山者の視点からまとめてみた。皆さんの参考になればと思う。

「感謝されない医者」(金田正樹著、山と渓谷社刊、1,680円)
金田正樹:1946年生れ、1971年岩手医科大学卒業。登山は高校時代から始め、秋田高校山岳部OBで創設した秋田クライマーズクラブの遠征でヒンズークシュの無名峰を初登頂。1973年第Ⅱ次RCCエベレスト登山隊にドクターとして参加など。加藤保男、吉野寛、禿博信、木本哲、山野井泰史・妙子氏などの凍傷を治療・手術

[凍傷はこうしておこる(p.200)]
寒冷に長く曝されると、交感神経の働きにより放熱を防ぐために血管の収縮が起こる。心臓から一番遠い手足の先は最も血管が細いので、ここの毛細血管が収縮すると血管内壁に赤血球が凝集しだす。血管内の血行が悪くなり、循環が停滞する。これを「血液泥化現象」という。動脈の流れが悪くなると当然静脈の流れも停滞し、手足が腫れる。
次第に血管壁が変性して血液内の水分が血管外に滲み出して、水泡形成となる。これが進行すると、血液の流れが止まり血栓になってしまう。酸素や栄養が行かなくなった細胞は壊死、つまり死に至る。

凍傷が起こる絶対条件は「寒冷」である。しかし、凍傷になるにはほかの要因が大きく関与している。それは飢え、脱水、疲労、遭難の危機などの精神的、肉体的「ストレス」である。

凍傷になりやすい体質はない。

[高所に於ける凍傷(p.204)]
高所における凍傷の原因は、「脱水」の影響が最も大きいと考えられる。
また、酸素不足が大いに関係していると思われる。

[凍傷の程度と症状(p.210)]
凍傷の重度は、寒冷に曝した時間の長さに比例する。凍傷の程度分類は、表在性凍傷と深部性凍傷に分けられる。

凍傷の始まりは、ジンジンした痛みから始まる。
これは交感神経が優位になって血管収縮しだしたころであり、末梢への血の流れが悪くなったというシグナルとしての痛みである。この時点で、「イエローカード」が出されたと思ってほしい。
その後、末梢神経への血流が途絶すると痛みは感じなくなる。血流が止まった末梢は、普段のピンク色の皮膚の色を失い、紫色のチアノーゼになり冷たくなる。この時点で「レッドカード」である。
さらに時間が経過すると、指先が白っぽくなる。

皮膚の色が濃い紫、または黒に近い色で全体が委縮し腫脹のない凍傷が、深部性凍傷である。深部性凍傷は体温を感じないほど表面が冷たく、その病変は皮下組織のみならず指の中心である骨まで及んでいる。

白蝋化した指は、表在性と深部性の中間にあることが多い。

水泡の表面の薄い皮膚は、外部からの細菌感染と真皮の乾燥化を防ぐ重要な役割を担っているので、除去することは厳禁である。

凍傷患者は表在性、深部性を問わず、再び寒冷に曝すと凍傷になりやすい。凍傷後の四肢を寒冷に曝すと、すぐに先端が紫色になったりジンジンした感覚になる。これは一年目が一番敏感で、長いと四、五年続くことがある。

[現場での温浴は有効か(p.216)]
登山中に凍傷になったら、まずは下山が第一である。

温浴する時期は、早ければ早いほど良い。
温浴で皮膚色がよくなるのと、感覚のもどりである痛みを感じるのはよい兆候と考えたい。
温浴後は水分を充分に拭き取り、乾燥した状況にし保温に務める。
問題は温浴をする場所である。それは全身の保温ができること、お湯の温度を一定に保てること、温浴後に患部の保温を維持できること、その後の移動に凍傷の手足をできるだけ使わないことが条件である。現場では、温浴とともに温かい飲み物を摂取することが最も重要である。

[治療(p.220)]
治療は表在性、深部性どちらであっても、受傷後一週間以内に開始しないと、その成績は悪い。

[凍傷は予防できるか(p.228)]
  1. 登攀、冬山の行動をスピードアップせよ。
    凍傷は寒冷に曝した時間の長さがその重症度に比例するので、行動時間を短くすることは予防の大きな要素である。
    手の中指、薬指、小指は、ピッケルを握るときに直接金属から低温が伝わりやすいのと、指が長く屈曲位になることが循環に影響を及ぼし凍傷の受傷率が高い。
    指が冷たくなり感覚を戻すために岩などに打ち付けるのは、感覚がないから加減できず危険である。
  2. 脱水に気をつけろ。
    特に行動中、魔法瓶から飲む温かい飲み物は、凍傷予防の薬と思っていただきたい。
    ビール、酒、コーヒーは利尿作用があり、体内の水分を出すことになるのでほどほどにしたい。
  3. 湿度と風には充分配慮せよ。
    首にある星状神経節が頭、頸部、肩、腕、手の血管の流れを調節している。この神経節を寒い風に曝さないように、暖かいマフラーで首を守ってやるのも凍傷予防の一つになる。
    凍傷は部分的な注意だけでは予防はできない。体全体の保温が第一であると心がけたい。
  4. 装備の工夫
    手袋、靴下は濡れた状態になると指の低温を招くので取り替えるなど注意が必要である。
  5. ビバーク中の凍傷が多い。
    緊張をほぐす温かい飲みものが凍傷を防ぐ最大の要素となることを再度強調したい。
  6. 予防薬はあるのか。
    ビタミンE剤は、抗血栓作用もあるとされるが、使い方を間違うと、出血傾向にもなるので避けたほうがいい。
    喫煙は、ニコチンの血管収縮の作用があり、凍傷には禁忌である。
  7. 寒さを肌で感じよう。
    冬季の山行を多く経験して、寒さに慣れ、気象の変化から身を守る方法を肌で学び、この危機の察知能力を現場で学ぶのが大事である。
(記:大竹)

凍傷


【日程】2012年12月8日(土)~12月9日(日)
【場所】八ヶ岳峰の松目沢
【メンバー】高品、新保(以上龍鳳登高会)、大竹
峰の松目沢に入り最初の10m滝取付きで、それほど寒さを感じなかったので素手でハーネス、アイゼン等を装着し登攀準備。この間30分ほど。登ろうとヘルメットをかぶろうとするがうまく顎のバックルが装着できない。変だなと見ると右手中指の先が白蝋色になっている。左手の親指、人差し指も固い。即、下山し美濃戸の赤岳山荘で洗面器に温水をもらい両手指を小1時間温める。つけると疼痛があり、手指を温水に入れたり出したりしながら温めた。途中鹿の湯の温泉に30~40分ほど浸かり帰宅した。上記3本の指先は濃い紫色に変色し、水泡も形成されていた。

凍傷12/10_1 凍傷12/10_2
12/10(月)朝撮影。写真では分かりづらいが、右手中指、左手親指、人差し指の3本の指先は濃い紫色に変色し、壊死が心配された。

月曜日朝一で、近くの聖マリアンナ医大病院に行き皮膚科で受診する。水泡の水を抜き点滴し、血行を改善する薬と皮膚潰瘍治療用の軟膏を処方される。しかし凍傷治療の経験がなさそうなので、家内がネット検索で杉田クリニックを見つけ翌日(12/11)受診に行く。

杉田医師は、白鬚橋病院で金田正樹先生の指導を受けられ、2009年マッターホルンで凍傷を負った広川健太郎氏の手術をされた方です。最初、警察病院に入院して午前、午後2回点滴しようかと言う話(厚労省の指針で、1日2回の点滴を受けるには入院しなければならない)もあったが、とりあえず通院治療で様子を見ることにした。血管を拡げるための点滴と指先の消毒だけで薬の服用はなし。火曜(11日)から土曜(15日)まで5日間点滴し、来週月曜日にもう1度点滴しその後のことを決めることとなった。とりあえず壊死の可能性、手術はなくなったようでほっとした。

[12/17(月)追記]診察の結果、点滴はせず指先の消毒のみ。次回は水曜日
[12/22(土)追記]中指手背側の乾いた水泡の皮を切除
[12/28(金)追記]年内最後10回目の通院、指先を消毒
[1/4(金)追記]壊死した表皮はほとんど剥けたが、指自体はまだ完治せず。特に右手中指先は薄紫色で押すと痛みがある。次回は1週間後
[1/12(土)追記]表皮はきれいになった。左手親指、人差し指は痺れがあり、右手中指はまだ紫色が残り寒いとジンジン痛む。この程度の凍傷の場合は痺れがなくなるのには半年程かかるとのこと。指先の痺れ回復のため、試しに末梢神経障害の薬メチコバールを1か月服用してみることにした。次回は1か月後
[2/12(火)追記]右手中指以外の痺れはほとんど消えた。薬の効果か、飲まなくても消えたのかは不明。ビタミン剤のようなもので副作用はないのでもう30日分薬をもらい、あとは自然治癒にまかせ通院は終了とする

凍傷12/18_1 凍傷12/18_2
12/18(火)撮影。指先の紫色が薄くなってきて一安心。

杉田医師に確認したことなど(私の場合で、凍傷の程度、患者の体調等により違うこともあると思います)
  • 応急処置としては、凍傷になった指を温水で温める
  • 水泡は破らない。破ると細菌感染のおそれがでる。血流が再開すると水泡内の液は吸収される
  • 当初患部の血管は塞がっているので、入浴で血流を良くすると浮腫を促進する
  • 患部を温める必要はないが、冷やさないようにする
  • 当初の治療は、血管を拡げる点滴のみで、服薬、軟膏などの処方はなし
  • 凍傷の程度の定義は自分としては不明確。火傷の1~3度に当てはめると酷い指は2度の真中より悪い状態である
  • お酒で体が温まるのが凍傷予防、回復に効果があるかは疑問である
  • 予防として血行を良くする薬を服用するのは、怪我した場合など出血が止まりにくくなるので勧めない
  • 見た目には治ったようでも、毛細血管や神経の損傷が回復するのには時間がかかるので、寒さには十分注意すること

参考サイト:
「感謝されない医者-凍傷-」金田正樹先生講演会(2007/06/16)
凍傷から学んだこと

[山行報告]
北沢を登り4つ目の鉄の橋(左岸から右岸へ渡る)から左へ入る。すぐの小さな沢を越え次の沢を詰める。少し行った分岐を右へ入る(倒木が塞いでいる)のが峰の松目沢である。
取付きに荷物のデポがあった。前夜宿泊した赤岳山荘の同宿者が松原ガイドと裏同心ルンゼに行くといっていたが、こちらに変更したようだ。

12月3日(小雪) 美濃戸赤岳山荘(7:40、-10°C)-林道終点堰堤(8:35)-峰の松目沢分岐(9:15)-10m滝取付(9:45-10:20)-赤岳山荘(12:00)

(記:大竹)

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